「高収入の仕事あり」「すぐに稼げる」「モデル募集」──そんな魅力的な言葉で始まる求人の裏側に、もし組織的な犯罪のネットワークが隠れていたとしたら、あなたは見抜けるでしょうか?

現代の違法行為に従事させることを目的にした人材集めの多くは、一見合法に見える求人や勧誘の形をとって始まります。

特に違法な性風俗においては「高収入」や「チャンス」などの甘い誘い文句につられた応募者を、供給網に乗せて従事させているケースが多く報告されています。

こうした“見えない犯罪ネットワーク”を、AI(人工知能)を活用して初めて大規模に可視化しようと試みたのが、アメリカ・ペンシルベニア大学ウォートン・スクール(University of Pennsylvania, Wharton School)の研究チームの研究です。

この研究は、機械学習と自然言語処理の手法を駆使し、インターネット上に投稿された膨大な数の性的サービス広告を分析することで、虚偽の求人を通じた人身売買ネットワークの実態を明らかにするという、一風変わった手法を提案しています。

この成果は2025年3月18日、米国の学術誌『Manufacturing & Service Operations Management』にてオンライン公開されました。

目次

  • まともな求人を装った犯罪組織の求人
  • 研究が暴いた“違法店のキャスト供給ルート”

まともな求人を装った犯罪組織の求人

この研究が焦点を当てているのは、いわゆる違法な性的ビジネス──中でも、インターネット上の求人広告を通じて、女性(あるいは男性)を性的サービスに従事させる人身売買的なリクルート手法です。

問題となる業態の特徴は、一見すると合法的な職業のように見える点にあります。

「高収入」「モデル募集」「時間の自由な仕事」など、聞こえのよいキーワードが並ぶこれらの広告は、ぱっと見では好条件の正当な求人に見えます。しかしその多くが、実際には自由のない労働を強いられる搾取の入り口になっています。