そうした人材はトランプ大統領がイメージしているかもしれない「職業訓練所」では教育できない。21世紀型の知的製造業のためには、それこそトランプ大統領が冷遇する優れた大学の存在が不可欠となります。

トランプ大統領の頭には「自由貿易主義対保護貿易主義」という対立軸があり、「自由貿易主義で海外から輸入が増え、米国の雇用が奪われた。保護貿易主義によって、米国内の製造業を保護し、失業者が増えないようにしなければならない」という構図が根強く、定着しているようです。

単純化すると、今や「保護貿易主義=共和党」対「自由貿易主義=民主党」という対立構造になっているようです。米国は世界のGDPの26%、中国は16%を占め、残りの主要国は1ケタしかなく、米国が最も豊な国です。その豊かさで潤っているのは、金融証券、IT企業、サービス業で、地域的にはニューヨーク、シリコンバレーなどの巨大都市で、共和党支持者の多い内陸部、かつての製造業が栄えたラストベルト(錆びついた工業地帯)は豊かさから取り残されている。

グローバル経済で成功した階層・地域と、グローバル経済で浸食された階層・地域に米国が分断され、その対立がトランプ大統領を生み、支持者がいるという構図でしょう。これは米国の国内問題であり、その対応がまずかったことから米国の分断が広がった。

さきほどのChatGPTは「米国の内政の失敗が先にあり、それを対外的な強硬策で解決しようとしているとの指摘が米国内でなされている。つまり『米国内の構造問題の外部化』といってもいいでしょう。『内政の失敗』の代償を対外的な強硬策で回収しようとしている。そうした問題を直視しなければ、『強いアメリカ』への回帰はありません」とも解説しています。同感です。

時代を1860年代に遡り、南北戦争(1861-65年)をおさらいすると、奴隷解放が大きな目的であるとともに、奴隷制で農業で潤う南部の自由貿易主義と、工業地帯を持つ保護貿易主義の闘いでもあったとされます。自由貿易主義対保護貿易主義の対立は南北戦争時で見られ、それが21世紀になって甦ったという面があります。21世紀版の「南北戦争」です。