そのため核は途方もない貴金属庫となり、もし掘り出せれば地球全土を50 cmの金メッキで包めるとまで言われます。

では、地表に存在するわずかな金は一体どこから来たのでしょうか?

従来の説は、地球形成後期の隕石の衝突によって後から供給されたというものです。

一方で近年になって現れたもう1つの説では、地球内部からの“リーク”、つまり核そのものから金属が漏れ出してマントルを通じ運ばれてきたというものです。

例えばカナダ・バフィン島の火山岩からは通常よりヘリウム3が多く検出され、タングステンにも異常が見つかっています

これまでヘリウム(3He⁄4He)やタングステン(182W⁄184W )などの同位体の異常から「核の匂い」として議論されましたが、これらはマントル由来でも起こり得るため決定打になりません。

そこでドイツ・ゲッティンゲン大学のニルス・メスリング氏ら研究チームは、核とマントルで明確に濃度の違う元素に着目しました。

それが白金族の希少な金属元素で、地球の核に濃縮されているルテニウムです。

研究チームは、この元素のごくわずかな“指紋”を追跡することで、核からの物質がマントルや火山を通じて地表に達しているかどうか確かめようとしたのです。

核に沈んだはずの貴金属が地表に出てくる

核に沈んだはずの金が循環によって地表に出てくる
核に沈んだはずの金が循環によって地表に出てくる / Credit:Canva

ハワイ諸島は太平洋プレート上の「ホットスポット」と呼ばれる地点に位置し、地球深部から湧き上がるマグマの柱(マントルプリューム)が地表に現れる場所だと考えられています。

そのためハワイの火山岩は、地球内部の奥深く、場合によっては核付近に由来する物質を含んでいる可能性があります。

メスリング氏らはハワイで産出した玄武岩質の溶岩サンプルを採取し、最新の分析技術を用いてその同位体組成を調べました(※同位体: 原子は同じ元素でも中性子の数が異なると質量が変わり、違う「同位体」として区別される)。