その仕組みはどのようなものだったのでしょうか?

最初の用途は人のためではなかった

仕組みは以下の通りです。

まず、機械が室内の熱気を取り込み、チリやホコリを取り除くフィルターに通しながら、水のスプレー(噴霧器)をかけます。

処理された空気は、化学物質(冷媒)の入ったコイルパイプに通され、空気中の水分を飛ばして湿度を下げていきます。

あとは、この除湿された空気を工場内に送り出すだけです。

(ちなみに、この機械は化学物質を変えることで「加湿」も可能でした。それゆえ、クーラーではなく、あくまで「エアコン:空気調節器」なのです)

キャリアの画期的な発明は、印刷工場の難題を完璧に解決しました。

ただ、この機械は、他の革命的な発明品の例にもれず、かなり巨大だったようです。

(携帯は当初、ショルダーバッグくらいありましたし、パソコンも大型の本棚と同等のサイズでした)

工場内に設置されたキャリアのエアコンのイメージ図
工場内に設置されたキャリアのエアコンのイメージ図 / Credit: Vietnam Investment Review – Carrier celebrates over a century of modern air conditioning(2022)

キャリアの開発した機械は、”世界初のスプレー式空調機器”として認定され、1906年に、これを「Apparatus for Treating Air(空気を取り扱う装置)」と命名して、特許を取得しました。

このように、世界最初のエアコンは、人が涼むためではなく、印刷工場の湿気を取り除くために作られたのです。

ところが、これを工場内に設置してから、非常に面白いことが起こりました。

お昼休憩になると、工場員たちがこぞって機械の近くに集まるようになったのです。

それもそのはず、除湿された空気は冷却されてもいますから、ヒンヤリした空気が蒸し暑い肌に心地よかったのでしょう。

こうして、エアコンは、室内を冷やすクーラーとしても使われるようになりました。