この中でも特に注目すべきは、「アドバタイズメントコール」と呼ばれる自発的な鳴き声です。
これまではオス特有の行動とされてきましたが、一部の種ではメスも同様に鳴いていたことが確認されました。
また、ある種では、メス同士が「コールバトル」のように鳴き声で競い合う様子が観察されています。
このことは、カエル社会において「性による役割分担」が思っていた以上に複雑で、双方向のアピール戦略が存在する可能性を示唆しています。
そして前述したように、メスの鳴声について文献に記載されているのは、全体の種の1.4%です。
これは、「それだけの種でしかメスが鳴かない」と言う意味ではありません。
確認されていないだけで、実際にはもっと多くの種でメスが鳴いている可能性があります。
さらに、メスの鳴声に関して記した文献でさえ、その鳴き声の”意味”を実験的に確かめた研究は全体のわずか10%程度でした。
科学者でさえ、カエルのメスの鳴声についてほとんど知らず、その研究もなされていなかったのです。

こうした現状は、今後の研究における最大の課題であり、メスの鳴声を検証する様々な実験が必要とされていることを示しています。
また、現在世界中で絶滅の危機にあるカエルの保護調査も、オスの鳴き声を前提とした音響センサーに依存しています。
つまり、メスが鳴いても、それが検出されないために存在自体がカウントされていない可能性もあるのです。
今後はメスの声に耳を傾けることが、生態系モニタリングや保全活動の精度向上にもつながるでしょう。
今度カエルの声を聞いたら、ちょっと耳を澄ませてみてください。
もしかしたら、その中にひっそりと混じっている“メスの声”を聞き取れるかもしれません。
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参考文献
Males to blame: We only know how 1.4% of female frogs sound
https://newatlas.com/biology/female-frog-sound/