こうしてチームは、世界中の文献を対象に、徹底的な再調査を始めます。

調査の対象となったのは、学術論文、学会発表、博士論文、そして一部のフィールドノートまで含めた約3000件におよぶ文献群。

対象言語も英語だけでなく、スペイン語、ポルトガル語、フランス語、ドイツ語など多言語にわたりました。

研究チームはそこから、メスのカエルが明確に鳴いていた記録だけを抽出し、 その種類、状況、行動背景を徹底的に整理していきました。

その結果、29の科に属する112種のカエルが、何らかの形で「メスも鳴く」ことが明らかになりました。

これは、全世界で既知のカエル種(約8000種)のわずか1.4%に過ぎません。

そして研究では、メスの鳴声にいくつかのタイプがあると分かりました。

カエルのメスが鳴く理由とは?「メスの鳴声を調べた研究は少ない」と判明

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カエルのメスの鳴声タイプ / Credit:Erika M. Santana(USP)et al., Proceedings of the Royal Society B(2025)

文献の再分析から、メスの鳴き声には以下のような6つのタイプが存在することがわかりました。

  1. アドバタイズメントコール(advertisement call): 繁殖相手を惹きつけたり、同性間の競争の中で発せられる自発的な鳴き声で、性的選択において機能すると考えられています。
  2. コートシップコール(courtship call): 交尾前のオスとメスの近距離でのコミュニケーションに用いられ、交尾への準備状態や位置確認、オスの呼びかけに反応して発せられる「返答」としての機能が示唆されています。
  3. アンプレクススコール(amplexus call): オスとメスが交尾姿勢(アンプレクスス)を取っている最中に発せられる鳴き声で、その機能についてはまだほとんど解明されていません。
  4. リリースコール(release call): 交尾の意思がない個体が、同種あるいは異種の個体からのアンプレクスス行動や不要な身体接触に対して拒否の意思を示す鳴き声。身体的接触に対してのみ発せられます。
  5. ディストレスコール(distress call): 捕食者に襲われた際や拘束されたときに発せられる、口を大きく開いて鳴く防衛的・警戒的な鳴き声です。
  6. アグレッシブコール(aggressive call): 縄張り防衛や接近してきた個体への警告など、同種間の敵対的なやり取りにおいて発せられる鳴き声。しばしば鳴き声の後に物理的な争い(喧嘩)へと発展します。