古代ヨーロッパ人は2万年前から「クジラの骨」を使って道具を作っていた。
そんな驚きの発見が報告されました。
スペイン・バルセロナ自治大学(UAB)らの国際研究チームは、欧州各地の博物館に眠る遺物を調査した結果、古代人が2万年前からさまざまな種類のクジラの骨を用いて、投射用の槍の穂先などを作っていたことを発見したのです。
これは人類がクジラの狩猟法を発明する前の時代であり、浜辺に打ち上げられたクジラの死骸を積極的に利用していたことを示しています。
研究の詳細は2025年5月27日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。
目次
- 2万年前にクジラの骨で道具を作っていた
- 当時の生態系についても知見も
2万年前にクジラの骨で道具を作っていた
今回の報告の舞台となるのは、フランス西岸〜イベリア半島の北岸に広がる「ビスケー湾」です。
ビスケー湾は今も多くのクジラやイルカが集まる海域として知られていますが、2万年前のこの海がすでに豊かな生態系を持ち、人類とクジラとの「接点」になっていたとは、これまで知られていませんでした。
今回の研究で分析されたのは、スペイン北部や南西フランスの洞窟遺跡から発見された83点の加工済みクジラ骨の道具と、90点の未加工のクジラ骨です。
これらは長年、博物館に保管されていたもので、当初はあいまいな視覚的判断で「おそらくクジラ骨だろう」と分類されていたにすぎませんでした。
ところが研究チームは近年開発されたZooMS(質量分析によるタンパク質種同定)という手法を用い、これらの骨の正体を明らかにしました。
結果、少なくとも以下の6種のクジラ類の骨が含まれていることが判明したのです。
・ナガスクジラ
・マッコウクジラ
・コククジラ
・シロナガスクジラ
・ネズミイルカ類
・セミクジラまたはホッキョククジラ
