このような親子関係は、一見すると仲の良い家族のようにも見えます。
ですが、実際には子どもの心理的自立を阻み、自我の形成を遅らせる可能性が高いのです。
エンメッシュメントは、明確な虐待行為ではないため見過ごされがちです。
しかし、「親の気分を害さないようにいつも顔色をうかがっている」「自分の進路や趣味を親に合わせて選んでしまう」といった経験がある人は、知らず知らずのうちにこの状態に巻き込まれている可能性があります。
では、なぜこのような関係が生まれてしまうのでしょうか?
ラザフォード氏によれば、多くの親は意図的にではなく、無意識にこのような関係性を築いてしまいます。
親自身が感情的な満たされない状態や孤独、自己価値の低さに苦しんでいるとき、その空白を子どもによって埋めようとすることがあるのです。
「あなたがそばにいてくれれば私は安心」「あなただけが私の希望」といった言葉の裏には、親自身が大人として処理すべき感情を子どもに託してしまう構造があります。
子どもにとって親は世界の中心であり、その親が喜ぶなら、どんな自分でも演じようとします。
その結果、子どもは「親を支える存在」であることを無意識に刷り込まれ、自分の本当の感情や欲求を押し殺してしまうでしょう。
では、そんな親の元で育った子供には、具体的にどんな影響が及ぶのでしょうか。
親子の距離が近すぎる!不健全な状態から脱するには?

親子のエンメッシュメントが続くと、子どもにはさまざまな心理的な影響が現れます。
まず顕著なのが、罪悪感の強さです。
たとえば、子どもが自分の進学や就職、結婚などの選択をしようとしたとき、「こんなことをしたら親が悲しむかも」「親を裏切る気がする」といった強い罪悪感に苛まれるケースがあります。