しかし1年後のシャルルボワサミットでは既にトランプ政権はパリ協定離脱を表明しており、他のG6諸国との違いがいよいよ鮮明になっていた。このため、首脳宣言はG7全てが合意できる共通メッセージ(パラ23)、G6のメッセージ(パラ24、25)、米国のメッセージ(パラ26)と両論併記の形となった。

これはG7としての結束を示すことを趣旨とする首脳声明では極めて異例である。これまでもドイツのような原発フェースアウト国があることを念頭に「原子力の利用を選択する国は」といった形で主語を限定するような表現ぶりはあったが、エネルギー・温暖化のような大きなテーマにおいて「カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本,英国及び欧州連合は」と「米国は」で別々なパラグラフが提示されたのは初めてである。

【シャルルボワサミット首脳声明抜粋2018年6月9日】

気候変動,海洋,クリーン・エネルギーに関し協働する

健全な地球及び持続可能な経済成長は互恵的であり,したがって, 我々は,我々の市民に雇用を生み出す持続可能で強靱な未来に向けたグローバルな取組を追求する。我々は,持続可能な成長を促進する上での若者,女児及び女性の広範な参加とリーダーシップを強く支持する。我々は,クリーンな環境,クリーンな空気,クリーンな水及び健全な土壌を達成するための我々の強い決意を集団として確認する。我々は,エネルギー安全保障の強化のための現在進行中の行動に共同でコミットし,我々のエネルギーシステムが持続可能な経済成長を引き続き牽引することを確保する上でのリーダーシップを示す。我々は,低排出な未来を実現するための道筋を,各国自らが立てることが出来ることを認識する。我々は,国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)において実施のための共通の一連のガイドラインを採択することを期待する。

カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本,英国及び欧州連合は,様々な資源からの気候資金動員への取組強化を含め,イノベーションの促進,適応能力の向上,強靱性強化と資金提供,脆弱性の削減及び公正な移行の確保を行いつつ,特に排出量の削減といった野心的な気候変動への行動を通じて,パリ協定の実施に対する強いコミットメントを再確認する。我々は,引き続き経済成長を進め,持続可能で強靱でクリーンなエネルギーシステムの一環として環境を保護し,適応能力へ資金を提供するため,市場に基づくクリーン・エネルギー技術の開発を通じたエネルギーの移行の果たす主要な役割並びにカーボンプライシング,技術的協力及びイノベーションの重要性につき議論を行った。我々は,今世紀後半のうちに,炭素中立な経済を達成するため,空気と水の汚染及び我々の温室効果ガス排出量を削減するとの我々の市民へのコミットメントを再確認する。我々は,国連総会における「グローバルな環境に関する約束に向けて」とのタイトルの決議の採択を歓迎するとともに,次期国連総会会期における国連事務総長による報告書の提示を期待する。

カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本,英国及び欧州連合は,協働によるパートナーシップを通じた気候変動との闘いを促進し,特に政府のあらゆるレベル,地方・先住民・僻地の沿岸及び小島嶼のコミュニティ並びに民間部門,国際機関及び市民社会を含む,全ての関係あるパートナーと協働して政策ギャップ,ニーズ及びベスト・プラクティスを特定する。我々は,この共同での取組に対する気候変動関連会議の貢献を認識する。

米国は,持続可能な経済成長及び発展が,安価かつ信頼できるエネルギー源への普遍的なアクセスによるものであることを信じている。米国は,全てのエネルギー源のための,オープンで,多様で,透明性があり,流動的で,安全な国際市場を促進する政策を通したものを含めて,世界の共同でのエネルギー安全保障を強化するための現在進行中の行動にコミットする。米国は,各国の置かれた状況に基づいた全ての利用可能なエネルギー源を生産,運搬,利用する国々の能力を発展させるエネルギーインフラ・技術への官民の投資を増加させつつ,世界の海洋及び環境の健康を改善することを通じて,エネルギー安全保障及び経済成長を引き続き追求する。米国は,「温室効果ガス削減抑制目標(NDC)」におけるエネルギーアクセス及び安全の重要性を踏まえて,他国がよりクリーンかつ効率的に化石燃料にアクセスし,利用することを支援し,再生可能な他のクリーン・エネルギー源の配置を支援するために,他国と緊密に取り組むことに努める。米国は,市場に基づくクリーン・エネルギー技術の発展を通じたエネルギー移行の鍵となる役割,そして,持続可能で強靱でクリーンなエネルギーシステムの一部として,経済成長の発展を継続し環境を保全する技術融合及びイノベーションの重要性を信じる。米国は,持続可能な経済成長を発展させるコミットメントを再び強調し,大気及び水質汚染を削減する継続的な行動の重要性を強調する。