2025年6月15〜17日、カナダのカナナスキスでG7サミットが開催される。トランプ第2期政権が発足して最初のG7サミットである。
本年1月の発足以来、トランプ第2期政権はウクライナ停戦、トランプ関税等で世界を振り回している。エネルギー・温暖化政策の面でもパリ協定から離脱し、インフレ抑制法(IRA)の事実上の廃止によりクリーンエネルギー支援を打ち切り、化石燃料支援を前面に打ち出しているトランプ政権の方向性は他のG6諸国と明確に異なる。

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近年のサミットコミュニケではエネルギー・温暖化問題は大きな柱である。例えばイタリアが議長国であった2024年のブーリアサミットでは首脳声明が日本語訳で56940文字のうち、エネルギー・気候・環境には全体の6分の1を占める9180文字が費やされている。その内容は1.5℃安定化、2050年全球カーボンニュートラル、石炭を含む化石燃料フェーズアウト等、脱炭素化一色である。
立場を大きく異にする米国とその他G6が集うカナナスキスでエネルギー・温暖化問題についてどのようなメッセージが出るのか。
参考になるのは2018年にカナダが議長国を務めたシャルルボワサミットである。
2017年5月のタオルミーナサミット(イタリア)の時点ではトランプ政権は未だパリ協定離脱を表明していなかった。このため以下のような形で「米国の見直しプロセスを理解する」という形でまとめられた。
【タオルミーナサミット首脳声明抜粋(2017年5月27日)】
我々は,集団的なエネルギー安全保障を強化し,開かれ,透明性があり,流動的な,かつ,安全な,エネルギー及び技術のための世界的な市場を確保することにコミットする。我々は,原子力を利用することを選択した全ての国々が原子力安全,核セキュリティ及び核不拡散で最高の水準を確保することを再確認する。我々は,成長と雇用の創出の観点から,エネルギー分野の変革及びクリーン・テクノロジーによって提供される重要な経済的な機会を活用することを決意する。
米国は気候変動及びパリ協定に関する自国の政策を見直すプロセスにあるため,これらの議題についてコンセンサスに参加する立場にない。米国のこのプロセスを理解し,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,日本及び英国の元首及び首脳並びに欧州理事会及び欧州委員会の議長は,伊勢志摩サミットにおいて表明されたとおり,パリ協定を迅速に実施するとの強固なコミットメントを再確認する。