筆者自身もこれにあたる。具体的に言えば、執筆する原稿作成の支援、法人業務の自動化プログラム開発などだ。自分が構想や戦略を持ち、仮説や検証、エラーチェックなどの工程をAIに任せることで、仕事の効率化、ミスの防止、そして質と量の向上を実感している。

『耐久スキル』

AIでは代替されにくい領域だ。人間特有の創造性、共感力、複雑な意思決定、倫理観などが求められる仕事で、AIは「ツール」という位置づけだ。これらのスキルはAIが進化しても価値が減じにくい。

具体例には経営者、保育士、プロスポーツ選手、心理カウンセラーといったものだ。これらの仕事の特徴は、人間同士の交流を通じてのみ生まれる価値や、重大な判断を必要としたり、人間がすることでのみ価値が生まれるものである。

AIは定型作業で高い効率を発揮するが、倫理的判断や創造的アイデア、そして複雑な人間関係の構築は人間の強みを活かす領域だ。AIも万能ではないことを理解し、その限界と可能性を見極めることが重要である。

まとめると、強化スキル、耐久スキルの仕事につき、自分のビジネスを拡張するためにAIを使いこなす。これが現時点では極めて投資効率が見込まれるリスキリングになり得るだろう。

必要なのは「お金より時間」

生成AIの開発には莫大なコストがかかる一方で、それをツールとして仕事で使いこなすスキルワーカー側にそれほどのコストは求められない。厳密に言えば、AIツールへの課金要素はある(筆者も複数のAIに課金して使っている)。

だが、月額数万円規模のオーダーは一部のプロフェッショナルに限られ、普通のビジネスマンなら無料、課金してもせいぜい数千円のコースで十分だ。高額なスクールに通う必要はなく、3,000円くらいの自己投資なら多くの人に無理はないだろう。

それよりも真の課題は時間だ。AIを使いこなす熟練にも時間が必要だし、これまで人力でやっていた業務を自動化するといった、個人レベルのイノベーションを起こすにもまとまった時間が必要になる。