ここまでの話でリスキリングの必要性は理解できたはずだ。ではここからは具体的にどんなスキルがAIの波に飲まれ、生き残るのか?を考察したい。

そのためには現在の業務とスキルを、以下の3分類で棚卸しすることが必要だろう。

なお、下記の3分類のフレームワークは、特定の単一の提唱者や学術論文に明確に定義されているものではない。これはAIの得意領域と不得意領域、および人間とAIの協働可能性に基づき、AIが労働市場やスキルに与える影響に関する様々な議論やレポートから、共通して見出される概念を整理し、筆者が独自に構築したものである。

『置換スキル』

いわゆるAIに置き換わることを運命づけられたスキルだ。具体的にはデータ入力、定型文での問い合わせ回答、既存データからの資料作成といった単純作業で、これまでは派遣社員やバイト、新卒の仕事で振り分けられる事が多かったものだ。

これらの仕事の特徴はロジックが明確で、大量のデータ処理の中でパターン認識や予測ができる。それでいて人間が行うとヒューマンエラーが想定される。

AIは「定型的」「反復的」なタスクは得意中の得意だ。しかも一度ロジックを作れば間違えずに、高速処理、低コストで対応してくれる。今からこの仕事に時間を投下するのは、自殺行為に等しい。他の付加価値の高いスキルへのシフトが賢明だろう。

『強化スキル』

これはAIを相棒のように活用することで、自身の能力を拡張・加速できる仕事である。具体的にはデータ分析(AIによるパターン発見・可視化)、コンテンツ生成(記事草稿・企画案の自動生成)、コード生成・デバッグ、マーケティング戦略立案(AIによる市場トレンド分析)が挙げられる。

これらの仕事の特徴は、すべての工程をAIに丸投げはできない(少なくとも現時点では)点だ。人間の専門的な知識や判断が必要で、AIが膨大な情報処理や高速な試行錯誤をサポートすることで、個人の生産性が劇的に向上する。この仕事に従事する人には「AIスキル」が求められるだろう。