英国空軍(RAF)コスフォード博物館に静かに佇むアブロ・リンカーンRF398。一見、戦後航空史を物語る磨き上げられた遺物に過ぎないこの爆撃機が、実は40年以上にわたり「世界で最も幽霊が出る航空機」として、数々の不可解な現象や目撃談の舞台となってきた。幽霊のような人影、謎の物音、説明のつかない出来事の噂は絶えず、好奇心旺盛な訪問者から超常現象研究家、そして懐疑論者までをも惹きつけてやまない。一体何が、このRF398をこれほどまでの幽霊話の中心に据えているのだろうか。
戦火を知らぬ爆撃機に囁かれる噂
アブロ・リンカーンは、第二次世界大戦末期に名機ランカスター爆撃機の後継として開発された。RF398が初飛行したのは1945年9月。すでに大戦は終結しており、実戦を経験することはなかったが、1963年までRAFで運用された後、1968年にRAFコスフォードに運ばれ、博物館の展示物となった。
戦いの傷跡こそないものの、RF398には説明のつかない逸話が数多く残されている。機内で死者が出たという記録もない。にもかかわらず、その超常現象の評判は、幽霊が出るとされるどんな古戦場にも引けを取らないほどだ。
この爆撃機にまつわる幽霊話が本格的に語られ始めたのは1979年のこと。夜遅くに修復作業をしていた技術者たちが、人影が近づいてきて消えるのを目撃したと主張。翌朝には工具や部品が移動していたという。その1年後には、格納庫の施錠をしていた職員が機体近くに人影を認め、照明をつけ直すと誰もいなかった。さらに数日後、暗闇で作業していた整備士が見えない力によってスパナを手に押し付けられるという奇妙な体験をしている。
こうした出来事は瞬く間に博物館スタッフの間で広まり、ドアが勝手に閉まる、奇妙な物音がする、コックピットや後部銃座で幽霊のような人影が目撃されるといった報告が相次いだ。最もよく目撃されるのは、飛行服を着た金髪の若い男性で、近づくと姿を消してしまうという。
