もう一つの邪推がアメリカシェール潰しではないかとみています。シェールオイルが生まれてアメリカは世界最大の産油国に君臨しています。(2位がサウジ、3位がロシア、4位がカナダ)ただアメリカンシェールオイルの行方は疑問符がついています。一か所のシェールのリグ(掘削機)寿命は20年程度ですが、実際にそれだけの期間、稼働し続けるのはなかなか難しく、技術革新との競争になっています。ただ、現在の原油価格相場だと新規のアメリカンシェールオイルでは利益が出ないとされます。更に産出したオイルを西海岸なり東海岸まで持っていくコストがかかります。
実際、アメリカのリグ数を見ると2019年代は1000を超えていたもののコロナで激減し300台にまで落ち込みます。その後、復活するも700台後半を上限に2024年初頭からずっと減少の一途を辿り、5月23日のリグカウントはついに600ちょうどまで下げてしまったのです。トランプ氏が掘れ、掘れというのと真逆の状態にあるのが見て取れます。
実際、アメリカの投資会社のGoehring & Rosencwajg のレポートはシェールオイル枯渇説を主張しています。ただし、アメリカのシェールオイルが不調でもシェールガスは当面安定的に増えるとみられています。
トランプ氏がカナダいじめをしている中でカナダの原油にも関税を課しているのですが、これはトランプ氏はカナダオイルの特性を十分理解していないかもしれません。アメリカンシェールは軽質油、カナダのオイルサンドは重質油なのです。この違いは大きいのです。軽質油は揮発性が高いわけでLPガスやガソリン向きである一方、重質油は価格が安い一方、用途が機械、発電所とか船舶向けになります。つまり使う目的が違うわけでアメリカは原油がとれるからカナダの原油はいらないという話は短絡的すぎるのです。
事実、私は1-2か月前、カナダの原油会社の株式に結構な金額で投資しました。理由は需要は必然だからです。