データは「欧州社会調査(ESS)」の2006年と2012年から取得され、18歳から49歳までの成人が対象です。
そして「あなたは現在の人生にどの程度満足していますか?」(0〜10点)と、「私は自分の人生における行動に価値があり、有意義だと感じている」(1〜5点)という2つの項目に対する回答を分析しました。
研究チームは、対象者の性別、年齢、教育、パートナーの有無、宗教心、両親の学歴・職業など多様な要因も考慮。
さらに、地域の福祉制度や文化的背景を考慮し、国を6つの文化クラスターに分類して結果を比較しています。
では、結果はどうなったでしょうか。
親になると満足度は低下するかもしれない。でも人生の意味は増す
研究の結果は、多くの人にとってどこか納得できるものかもしれません。
まず、「人生の満足度」については、結果が分かれました。
若年層(18〜29歳)や低学歴・単身の親では、満足度が非親よりも低下する傾向が見られたのです。
特に、福祉制度の乏しい南欧・中東欧の国々ではその傾向が顕著でした。

一方で、育児支援の整った北欧では、親である人々の満足度・意味のスコアがともに非親よりも有意に高いという結果が示されました。
この結果が示すのは、親になることで満足度が下がるのは、「日常生活にかかる負担の重さ」や、「時間・お金・サポートといった育児に使える資源の不足」が原因だということです。
特に経済的に余裕がない場合、育児が「喜び」よりも「重荷」として感じられやすくなります。
パートナーとの関係性、年齢、教育なども大きく関わっており、社会的支援がない中で育児に向き合うことは、満足度の低下につながるのです。
これだけを考えると、親になることは「ただただリスクが高いこと」のように思えるかもしれません。
しかし、この研究は親になることの別の側面も示しています。