一方、「先入先出法」では、先に仕入れた商品から販売したと仮定して在庫を評価するので「移動平均法」よりも単純である。5月は「移動平均法」と同額だが、6月の利益は次のように計算される:

「1.850千円」-「400千円+(3千円x500袋=1,500千円)-(3千円x100袋=300千円)」=250千円。5月の利益200千円と合計で450千円となる。CF150千円との差額300千円は、6月末在庫の評価額300千円と等しい。これが7月に3500円で100袋販売されれば50千円が利益になる。

結果、「移動平均法」と「先入先出法」の在庫評価の違いによって、このケースでは5・6月の利益に、6月末の在庫評価額の差と同額の16.7千円(33.3千円と50千円)の差が生じた。

「移動平均法」は仕入れの都度、既存在庫と「移動平均」して在庫評価を行うので、経営判断がし易いので、システム化が進んでいる大企業の多くはこれを採用している。他方、「先入先出法」は決算時にだけ在庫評価を行うので、日常の手間は掛からないが、経営判断が遅れることがあるとされる。

農水大臣に「小泉米」を、「価格差をつけて並べるよう要請」されたスーパーは年間の連結売上高が6千億円規模だから、在庫評価方法をもし変更するとなれば、膨大な額の差異が前期比で生じる可能性がある。有価証券報告で届け出ている在庫評価方法を変更する必要もあるかも知れない。

『読売』の記事を読んで、こんなことを夢想した訳だが、これから随意契約で放出される何十万トンかの備蓄米を「小泉並べ」するとなれば、何十社かになるであろう随意契約先をどう選定するかと共に、縷説したような課題も選定された随意契約先に生じることになるのではなかろうか。

競争入札から随意契約に変えることによる、備蓄米の価格低下を誇示したいがための「小泉米並べ」であろう。けれど、そんなことは販売先に任せれば良いのであって、大臣にはもっと根本的な農政改革に頭を使ってもらいたい。