政治的な価格 指定は備蓄米法令を逸脱
小泉農相による「コメ5kg2000円指定」は、備蓄米の根拠法令「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」の制度趣旨を逸脱したものである。
同法では、政府備蓄の目的を「米の供給が不足する事態に備えること」と明確に限定しており、政治的な価格操作は、定義上も制度設計上も想定されていない。
にもかかわらず、今回の価格指定は、備蓄制度の趣旨に反する恣意的かつ脱法的な介入であり、行政の裁量権を著しく逸脱する行為に他ならない。これは、法的にも看過できない重大な問題をはらんでいる。
このような制度の逸脱に対して、コメ農家が受ける損失は無視できず、ただちに価格指定の撤回を求めるとともに、必要に応じて法的手段によって是正を図るべき局面に入っている。
「価格破壊」発言が示した異常な市場介入姿勢
小泉農相は就任直後、「価格破壊を起こさないと世の中の空気変わらない」と発言し、市場操作を前提とした姿勢を露呈した。これは、民間価格への介入を当然視する脱法的態度を示すものである。
5月25日のNHK番組では、「備蓄米の政府売渡価格(1俵60kg=1万円、玄米)と販売価格(5kg=2000円、精米)」を事実上指定する発言を行っている。
違法な価格統制にあたるおそれ
政府が民間の小売価格を一方的に設定・指示することは、備蓄米であっても主要食糧法の制度設計に含まれておらず、同法に反するだけでなく、実質的に価格統制に該当する重大な違法行為である。
加えて、政府は備蓄米100万トン、MA米70万トンを保有し、その放出判断によって民間市場の需給や価格に決定的な影響を及ぼしている。このような構造のもとでは、農水省は単なる制度管理者にとどまらず、実質的に米市場における支配的プレイヤーとして機能している。
この優位的な立場にある行政機関が、特定の価格水準を事実上指定し、流通や販売を誘導する行為は、独占禁止法上の「支配的地位の濫用」に類する構造を有する。