現在、研究チームはこの理論的な手法を実験的に実証すべく準備を進めており、将来的な実用化に向けて新世代の量子センサー開発を視野に入れています。

本研究は、前述の「浮揚オプトメカニクス」という新興分野の流れの中に位置付けられます。

レーザーで真空中に粒子を浮かせて巧みに制御するこの技術により、科学者たちは粒子の運動を極限までコントロールし、量子状態の保持や室温での量子現象観測などに次々と成功しています。

バックアクションによる量子ノイズの“沈黙”という今回の発見は、そうした精密制御技術に新たな地平をもたらすものです。

大きな物体の量子現象を探究し、未知の物理や超高感度計測に挑む科学の最前線に向けて、鏡に浮かぶナノ粒子が静かに道を照らし始めています。

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参考文献

Quantum Noise? Vanished – Inside the Mirror Experiment Rewriting Physics
https://scitechdaily.com/quantum-noise-vanished-inside-the-mirror-experiment-rewriting-physics/

元論文

Backaction suppression in levitated optomechanics using reflective boundaries
https://doi.org/10.1103/PhysRevResearch.7.023041

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部