この行動が単なる“偶然の連鎖”ではないことは、音声信号が鳴っていた時間の割合(わずか3.75%)とタカの登場タイミングとの統計的な一致率からも裏付けられています。

動物の驚くべき適応力の高さ

この行動は、動物における「因果関係の理解(=赤信号の音が鳴ったら、長い車列ができる)」の存在を示す貴重な証拠といえます。

そしてタカは、獲物の位置が見えない状態でも、どこに何があるかを正確に把握し、最短ルートを記憶して移動していたのです。

こうした高度な認知能力は、これまでカラスやオウムなどの鳥類、あるいは霊長類やネコなどの哺乳類で報告されてきました。

例えば、カラスはクルミや小型の脊椎動物を交通量の多い道路に落として、車に轢かせて殻や骨を割らせることがあります。

また死肉を食べる鳥たちは、交通量の多い道路を常に監視・巡回しており、轢かれた動物を即座に奪い取るために動いています。

他にも、小鳥たちは車体に付着した虫の死骸をついばみ、移動中の車両、列車、船の中に巣を作ることさえあります。

一方で、今回のように猛禽類における自然下での実例は非常に希少です。

また、観察されたクーパーハイタカは若鳥であり、この場所に渡ってきてまだ間もない個体であった可能性が高いことから、この知性は都市生活によって進化したものではなく、もともと備わっていたものだと考えられます。

ディネツ氏は2022年冬にも、成鳥の羽色をした同一個体と思われるタカが同じ戦法で狩りをしているのを目撃しています。

しかし翌年夏、信号機の音声装置が故障し、加えて獲物の集まる家に死んでいた大家族が引っ越したことで若いハイタカも姿を見えなくなり、以降この狩りのスタイルは確認されていません。

それでも今回の事例は、動物たちが人間の作り出した人工物を巧みに利用して、自らの狩猟戦略に役立てる適応力を持つことを示すものとして大いに注目されました。