クーパーハイタカの狙いはその鳥たちだったのです。

ディネツ氏はこの出来事に強く惹かれ、後日、車を“隠れ観察所”にして、計18日間にわたる観察を開始。

その結果、氏はタカの驚くべき狩りの仕組みに気づくことになります。

それは「ただ飛び出している」のではありませんでした。

タカは明らかに、ある特定の条件を待ち、計画的に動いていたのです。

赤信号を巧みに利用していた

その特定の条件とは「歩行者用の音声信号が鳴ること」でした。

この交差点では、通常の赤信号だと車列はせいぜい4台程度で、タカが姿を隠して獲物に接近するには短すぎます。

ところが歩行者が横断歩道のボタンを押すと、赤信号の時間が30秒から最大90秒に延長され、車の列は10台近くにも伸びて視界を遮る壁となるのです。

このとき同時に作動するのが、視覚障がい者のための音声信号です。

タカはこの「音」をきっかけに、先の画像の家屋11番の前の木に舞い降り、そこで1分程度待機。

車列が十分に伸びて獲物からの視界が完全に遮られた瞬間に飛び立つルールを確立していることが観察されました。

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クーパーハイタカ/ Credit: Dinets, 2025.

それはまるで狙撃兵のように、タイミングとルートを正確に計算した動きだったのです。

ディネツ氏は12時間の観察中に6回の攻撃行動を記録し、そのうち2回では獲物を捕らえる決定的瞬間も目撃しています。

1回はスズメを掴んで飛び去り、もう1回は地面でハトを食べているところを確認しました。

さらに驚くべきは、このタカの狩猟戦略が観察されたのは平日朝のみに限定されていたという点です。

週末は車列もなければ、音声信号もなく、庭に食べ物が残されることもありません。雨の日の翌朝も同様です。

つまりこのタカは「どのタイミングで獲物が現れるか」「どの条件が揃えば狩りが成功するか」を総合的に記憶し、把握していたと考えられます。