交代で休むことができれば、一方的に人類側だけが疲労を回復させることもできます。

経済的な観点から言えば、これは機会費用の利点です。

研究ではランニングによって得られた時間的な余裕を考慮に入れた計算が行われたところ、ウォーキングとランニングの正味のコスト差はほぼないことが示されました。

以上の結果から研究者たちは、長距離ランニングを取り入れた「持久狩り」は人類にとって標準的な狩猟法であったと結論付けています。

具体的には、持久狩りを主要な狩猟法としてきた結果、人類は体温調節を改善するための発汗量の増加、より効率的なエネルギーの貯蔵と放出のためのアキレス腱の発達、さらには持続的な有酸素活動のための呼吸器系の変化など、さまざまな生理学的および解剖学的特徴の発達に影響を与えたと考えられます。

マラソンやウルトラマラソン、トライアスロンなど極めて高度な持久力を要する競技が存在するのも、人類が持久狩りにあわせて肉体を進化させてきた結果だと言えるでしょう。

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参考文献

Did humans evolve to run long distances?
https://www.zmescience.com/science/news-science/did-humans-evolve-to-run-long-distances/

元論文

Ethnography and ethnohistory support the efficiency of hunting through endurance running in humans
https://doi.org/10.1038/s41562-024-01876-x

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。