数年前からメディアやインターネット上では「若者の食べログ離れ」が進んでいるといわれているが、「食べログ」を運営するカカクコムの発表によれば、サイトの月間ページビュー(PV)数は23億を超え、年間売上は約330億円(25年3月期実績)と、現在も同事業の売上は対前年比で約20%増の成長を続け、過去最高を更新しているという。では、なぜ「食べログ離れ」などといわれるのか、そして、事業が順調に成長している理由はなんなのか。「食べログ」事業を総括するカカクコム上級執行役員・鴻池拓氏に話を聞いた。

――数字ベースでは好調なのになぜ「若者の食べログ離れ」と言われたのでしょうか。

鴻池氏 以前から我々のサービスは、対象を若い方に絞った場合、弱い部分があるんです。例えば学生さんは社会人に比べ、会食やミーティングのためにお店を予約する場面は少ないですよね。また社会人は営業や出張で知らない街に行く機会が多いため、学生さんに比べ「ここにはどんなお店があるのかな?」と検索する場面が多くなります。このため、「20代半ばからよく使うようになった」というユーザーが多いのです。

 またユーザーの皆さんが飲食店を探す時にインスタグラムやGoogleマップを使うなど、以前よりお店探しの手段が多様化しており、それらが「食べログ離れ」と言われる原因になったのかもしれません。しかし食べログが使われなくなったということではなく、インスタやGoogleマップなどと食べログは併用されている状況だと考えています。

――口コミの評価に関し、信頼性を問う声もありました。

鴻池氏 当然ですが、特定の業界やお店だけ評価を変えるようなことはありません。我々は参考になるコンテンツを提供できているかどうかを重視しており、その観点で算出方法を改善しています。例えば点数は単純平均ではありません。初めて投稿した方より、100件、1000件と口コミを投稿して下さるような外食経験が豊富な方の評価のほうが影響度は大きくなります。

――確かに私も、★3.7以上は神、★3.5あれば「おいしい!」、★3.2~3.3なら「ちゃんとおいしい」か「好みがわかれる店かも?」といった形で参考にしています。ただしなぜかラーメン屋さんの評価が高くなりがち、とも思っているのですが?

鴻池氏 食べログは影響度を持つユーザーからより多くの高い評価が集まることで、点数が上がる仕組みになっています。ラーメン屋さんは気軽に行ける価格帯でファンも多いため、口コミの件数が増えやすく、その結果として評価が付きやすいということはあるかもしれません。

――なるほど。いずれにせよ「食べログ離れ」はないということですか。

鴻池氏 サービス利用者はブラウザベースで1億人を超え、なかでもアプリユーザー数は毎年10%以上、ネット予約人数に至っては毎年30%以上伸びています。

スタッフが全国のお店に手厚いサポートを実施

――では逆に、ユーザー数も業績も伸びている理由は。

鴻池氏 様々な要因がありますが、中でも大きいのは、食べログでネット予約できるお店が増えたことです。

 私たちは2020年頃から、サイトやアプリからシームレスに予約がとれるお店を増やすため努力を重ねてきました。例えばシステムはお店に無料で提供し、手数料はネット予約をした上で実際にご来店いただいたお客様の人数に応じていただいています。これならお店にリスクはありません。

 さらに、導入時にはスタッフが全国のお店に手厚いサポートを実施しています。

――飲食店の経営者の中には、IT機器を扱うのが苦手な方も多いでしょうからね。

鴻池氏 飲食店さんがDXを不安に感じるのは、オペレーションが可能かどうかなんです。そこで当社は「オンボーディングチーム」が1時間以上かけ、お店の方と一緒にネット予約の初期設定を行い、操作方法のレクチャーまでさせて頂く、といった手厚いサポートを1軒1軒徹底しています。

 こうして予約がとれるお店が増えると、ユーザーは「食べログならそのまま予約できる」と使ってくれるようになり、ユーザーが増えれば、「うちにも導入したい」と言って下さる飲食店さんが増えます。そんな、いいスパイラルに入っているのです。

――コロナの頃から将来を見越して実施した戦略が当たった、ということですね。

鴻池氏 はい。食べログを便利に使っていただくためには、いかに基本的なことをちゃんとやるかが大切なんです。コンテンツが充実し、UI(ユーザーインターフェース)が使いやすく、アプリも速く動く……こういったことの積み重ねで多くの方にご利用いただけている、という今があります。

 また、お店選びの参考になる口コミを多数集めることにも努力を重ねています。例えば口コミを投稿して下さる方のための「食べログレビュアーアワード」や、口コミ投稿すると最大1万ポイントが当たるキャンペーンの実施などが挙げられます。