そして2つ目はADHDの治療法や支援体制が増えていることです。

ADHDには現在、薬物治療や行動療法が充実しており、またADHD小児に対する学校側のサポートも以前に比べると遥かに整備されつつあります。

ダニエルソン氏は「ADHDの治療や支援を安心して受けられる体制が増えていることで、保護者や患者が診断を受ける動機が高まっているのでしょう」と話しました。

つまるところ、ADHDの世界的な増加傾向は患者自体の数が増えているというよりも、診断の機会が増えていることが要因と考えられるのです。

それゆえ、ADHD症例数の増加は「診断が広く行き届いているという点で、肯定的な結果である可能性が高い」とダニエルソン氏は指摘しています。

コロナパンデミックも増加に関与していた?

その一方で、ダニエルソン氏は2019年末から世界的に流行した「コロナパンデミック」もADHD症例数の増加に関与しているのではないかと話します。

特に子供たちにおいては、コロナ禍によるリモート学習のストレス、社会的な孤立、家族の健康不安、日常生活の乱れなどから、ADHDに特有の「不注意・多動性・衝動性」の症状を悪化させた可能性が高いのです。

それから、おうち時間が長くなったことで、スマホやパソコン、テレビ、ゲームなど、スクリーンタイムの時間が急増したことを関係していると推測されています。

実際に最近の研究によると、1日に2時間以上スマホを使用している人は、スマホ使用が少ない人に比べて、ADHDの症状を発症するリスクが10%も高いことが示されているのです。

詳しくはこちらの記事をご参照ください。

スマホを1日2時間以上使っていると「大人のADHD」発症リスクが高まる?

また研究者らは「保護者が子供と家で過ごす時間が長くなったことで、子供のADHD傾向に気付きやすくなったことも一因でしょう」と考えています。

以上を踏まえると、ADHD症例数の増加はADHDに対する人々の認識度が高まっていることが大きな要因であり、それにプラスして、コロナ禍に伴うストレスやスクリーンタイムの増加が症状を悪化させた可能性があると見られるようです。

誰もがADHD的な特性を持っている?