大容量・低価格の食品を豊富に取り揃える「業務スーパー」を運営する神戸物産の業績が好調だ。2023年11月~24年10月期連結決算は、純利益が前年同期比4.3%増の214億円を記録。25年10月期の連結業績見通しは売上高が5,250億円、純利益が240億円とともに過去最高を見込んでいる。全国約1,100店舗を出店した今も毎月、新規出店を重ねている。今回は、神戸物産の衰えを知らない業績拡大の背景にある取り組みや戦略について話を聞いた。
自社グループ工場製造・ローコストオペレーションで低価格を実現
――貴社の業績が順調に伸びている要因についてお聞かせください。
当社は「良い物をより安く」を大義としています。品質を維持しながらも安い価格で商品をご提供するための、サプライチェーンや店舗運営の仕組みの改善と「食の製販一体体制」の強化を進めてきたことが、今の業績に反映されているのだと考えています。
「食の製販一体体制」として、国内にある自社グループ工場で1,100店舗以上ある業務スーパーのみで販売するオリジナル商品を製造しています。原料から製造工程まですべて神戸物産グループで企画したのちに、自社グループ工場で製造し、業務スーパー各店に卸すというプロセスのため、高品質の商品をベストプライスで提供できることが当社の強みです。加えて、約1,100店舗という規模のスケールメリットを活かした大量仕入れも、低価格を実現するための重要な要素となっています。
そして、業務スーパー店舗においてその安さを実現しているのが「ローコストオペレーション」です。ローコストオペレーションは人件費を抑えて、店舗運営を実現する取り組みです。たとえば、商品補充の場合、通常のスーパーでは商品を棚に入れ、余った商品をバックヤードに運ぶ必要がありますが、当社ではそういった作業をできるだけおこなわないような店舗設計を採用しています。
具体的には、商品棚を十分な奥行きで設計し、商品1ケースをまるごと陳列できる仕様としています。また、冷凍商品用に大容量の冷凍什器を導入することで、大量の商品を一度に陳列することが可能です。これが実現できるのは、商品を自社で企画しているため、商品の入数や規格をコントロールできるからです。
また、「エブリデイロープライス」という方針を採用しており、日替わりセールのような販促活動は基本的に行いません。これは、チラシなどの広告費や、セール用の売り場作りにかかる人件費や時間を削減するためです。このように販売管理費を抑えることで、その費用を商品価格に還元し、お客様により安価で良質な商品を提供することを実現しています。
――全国スーパーマーケット協会のデータによると、業界の平均営業利益率が約1%である中、神戸物産は約7%という数字を示しています。営業利益率の高さは、好調な業績の要因の一つなのでしょうか?
はい。ただし、業務スーパーはFC(フランチャイズ)オーナー様による出店という形態が主であり、神戸物産はFCオーナー様の店舗に対して卸し売りを行う企業です。この点は一般的な小売りとしてのスーパーマーケットとはビジネスモデルが異なっています。
ロイヤリティとしては仕入れ額の1%を頂いておりますが、当社の主な収益源はロイヤリティではなく、自社グループ工場で製造した商品や、海外の工場から直輸入した商品を業務スーパー店舗に卸すことで利益を得ています。
店舗に関しては、賃料、人件費、水光熱費などの販売管理費はFCオーナー様が負担しますが、当社は経営資源を商品の開発と改良に集中投下できます。また、店舗運営と新規出店をFCオーナー様に委ねることで、当社はより良い店舗を作るための、経営や店舗運営のアドバイスに注力・専念できます。当社の強みである業務スーパーオリジナル商品を店頭に並べてもらうことで、お客様の来店動機を生み出し、FCオーナー様が売上と利益を伸ばすことで、さらに店舗を出店してもらい、当社はより多くの商品を製造・出荷するというかたちでFCオーナー様と支え合っています。