ドイツの民族過激派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)の外交政策でワイデル共同党首が主導する親米派がクルバラ共同党首ら親ロ派を抑えて主導権を掌握しつつある。AfD内の外交政策の変動を報じたドイツ民間放送ニュース専門局(ntv)のトム・コルマー記者の記事は注目される。そこで以下、AfD内の最新の動向を報じた同記者の記事の概要を紹介する。

AfDの外交路線で親米派のワイデル党首(右)と親ロ派のクルバラ党首、AfD公式サイトから

AfD内の外交路線で変更を示唆する出来事は、連邦議会の外交委員会でAfDの外交政策のスポークスマンだったマティアス・モースドルフ議員が同委員会の議席を失ったことだ。コルマー記者は「モースドルフ氏はAfDの新たな戦略の最初の犠牲者だ。同党は、外部の世界に対して、自分たちが親ロシア的ではないという印象を与えたいと考えている。ロシアを定期的に訪問し、チェロ奏者としてクレムリンに近いグネーシン音楽アカデミーの名誉教授も務める外交政策報道官は適任ではないのだ」と分析している。

党内でも特に旧西独出身の党員にとって、一部の同僚のロシアへの接近は長い間悩みの種となってきた。例えば、モースドルフ氏の前任者であるペトル・ビストロン氏は、ロシアからの贈賄の疑いで捜査を受けている。また、プーチン大統領の再選を称賛した国会議員など、AfD内ではロシアを支持する議員が少なくなかった。

AfDには2人の党首、アリス・ワイデル党首とクルバラ党首の2人党首体制だ。前者は親米派、後者は伝統的な親ロシア派だ。そして前者がここにきて主導権を握ってきているのだ。実例は、AfDのバーデン=ヴュルテンベルク州のマルクス・フロンマイヤー氏がAfD議員団の新たな外交政策報道官に選出されている。同氏はワイデル党首の側近だ。

ロシアの侵攻開始直後、AfDは連邦議会で、「ウクライナ戦争は西側諸国にも一部責任がある」とするプーチン氏の主張を支持してきたが、同党からここにきて異なる論調が聞こえてくる。例えば、連邦執行委員会および国防委員会の委員であるハンネス・グナウク氏は、雑誌「シュテルン」に対し、「ロシアは復活した超大国としての利益をある種の残忍さと冷酷さで追求している。ロシアは我々の友人でも敵でもない」と語っている。