ところが安倍氏が首相になってからベア復活にベースアップを民間企業に働きかけ、また昨今では少子化で優秀な人材が確保できない問題から給与引き上げ競争に発展します。では初任給30万円も払う企業はそんなに儲かっているのか、といえば必ずしもそうではなく、その分、賞与を削ったりしてやりくりしているのです。そう考えると年間の総収入ではあれ?ということもあるのでしょう。それでも初任給の高さは大学生にはきらきら光るようです。私から見ればエビで鯛を釣るようなものでしょう。新入社員の3年以内の退職率は1/3を超えています。そこまで計算すれば人事部としては結局良い人材だけが残るという勝利の方程式となるわけです。

ソニーが冬の賞与を止めたそうです。他にバンダイもフォローしているようで、今後これを真似る会社はもう少し増えるのかもしれません。特に海外での事業比率が多い企業や外国人の従業員が多い場合、日本の賞与システムは違和感があると思います。

ソニーシティ ソニーHPより

海外での賞与は2通りあります。1つは本当の意味での餅代でクリスマスの頃、出費が多いので従業員に均一に100-数百ドル程度を機械的に配分するもの、もう一つは成果主義の企業で個人個人の達成度に応じて賞与を支給する場合です。後者の賞与は人によりとてつもない金額となり、特に証券会社で資金運用をしている人が成功報酬でもらう場合、社長の給与を追い抜くケースすら発生します。

では日本で賞与文化は廃れるのか、といえば案外そうなれない理由がある気がします。それは住宅ローンの返済。賞与時に給与月より多めの返済を行うボーナス時返済オプションの選択をしている人も多いかと思います。そこで賞与が無くなったり給与への再配分で減額となると「賞与月にローンが払えない」という人が出てくるのです。平常月にその分余計に渡しているじゃないか、と会社側は言うでしょうが、「それは既に使っちゃったので…」という人は必ず出てくるものです。先日お話しした給与支給の頻度は家計管理のレベルを表す、と申し上げましたが、賞与と住宅ローンの紐づけは案外盲点な気がします。