実際、カロロ准教授らはこのモデルにおいて、時間結晶状態でエネルギーを供給すると量子電池としての性能が飛躍的に高まることを示しました。
カロロ准教授は「量子電池は、例えばナノスケールのデバイスにエネルギーを送り込む用途などが考えられます。古典的な電池よりも高性能を発揮する可能性を秘めています」と述べています。
今回の成果は、時間結晶という全く新しい物質相がその高性能電池の鍵となり得ることを示した点で、非常に興味深いと言えるでしょう。
“振動するほど貯まる”──結合時間結晶モデルの衝撃

理論モデル上とはいえ、時間結晶を用いることでエネルギー貯蔵能力が向上することが示されたのは、量子電池研究における大きな一歩です。
もしこの時間結晶量子電池が将来実現すれば、エネルギー貯蔵の在り方が一変する可能性があります。
例えば、次のような分野で恩恵が期待できるでしょう。
再生可能エネルギーの蓄電: 太陽光や風力発電の余剰エネルギーをより効率的に貯め、必要に応じて迅速に放出。
量子コンピューティング: 大規模量子コンピュータを駆動する電源として、超高速で充電可能な電池を提供。
医療デバイス: 体内に埋め込むセンサーやナノマシンに長寿命の電力供給源を実現し、メンテナンスや交換の頻度を低減。
もっとも、こうした夢の技術を実用化するまでには課題も山積しています。
今回示された高性能はあくまで理論上のものであり、実験的な検証や実際のデバイスへの応用には今後さらなる研究が必要です。
カロロ准教授も、量子電池実現には研究分野を超えた協力が不可欠だと強調します。
「次のステップとして産業界とも、理論家や実験家とも話し合っていきたい」と彼は展望を語ります。
時間結晶はまだ歴史の浅い新概念ですが、その可能性に世界中の科学者が注目しています。