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インボイス導入時にも「消費税は預かり金ではないので益税なんかない。益税解消を目的とするインボイスは要らない」との主張がされたが、これもまったくの嘘だ。
確かに「消費税は預かり金ではない」というのは本当だ。源泉所得税のように、事業者に徴収義務が課されているわけではない。
したがって、法的には預かり金ではない。
これは、「国に納税するための預かり金のようなものだから、払うのは仕方がないよね」と価格転嫁を促し、事業者の負担を軽減するために、財務省が使った方便である。
嘘と言えば嘘だが、こうでもしなければ価格転嫁はさらに難しくなり、事業者の負担は一層重くなっていただろう。
「消費税と明示して上乗せされた代金を、『あれはうちの売上の一部だ』などと言って、消費者が素直に支払ってくれるだろうか?」
「預かり金じゃないから益税はないという判決もあるぞ」という話もあったな。
これも巧妙な切り取りだ。
確かに「消費税は預かり金ではなく売上の一部だ」と書かれた判決文は存在する。
ただしそれは、免税事業者による益税の存在を否定したものではない。
その判決文の直後には、「とはいえ、免税事業者にピンハネの余地があるのは事実であり、納税したほうがよいのは間違いない」と、真逆のことが述べられている。
その手前で都合よく切るなよ。
とはいえ、判決文の原文にたどり着ける一般人はほとんどいない。だから、都合よく切り取ってもバレにくい。
それに、この裁判自体が「免税や簡易課税があるのは不公平。だから消費税は違憲だ」と、消費税反対派が起こしたものだった。
裁判所はこれに対し、「それはそうだが、導入したばかりでもあるし、益税といってもせいぜい3%。事務負担の増大と引き換えにするよりは、多少の益税には目をつぶってもよいのでは」と判断したのだ。
それを逆手に取って、「だから益税はない」と主張の根拠にしたのは、かなり筋の悪いやり方だ。