三笠書房の対応 三笠書房の公式見解では、本書の意図が「障害に対する理解を深めるもの」であり「障害を持つ方々への差別を助長するものではない」と述べている。著者も同様の見解を示している。

職場のコミュニケーション課題 本書が扱う職場でのコミュニケーション問題は、多くの人が直面する現実的な課題である。上記の事例のようなコミュニケーションの困難さは、障害の有無にかかわらず様々な背景から生じる可能性がある。こうした問題への対処法を議論することそのものには意義があると言える。

言葉が社会に与える影響は無視できない。特定の表現が障害への偏見を強化する可能性がある一方で、現実の職場での課題を議論する上でどのような表現が適切かについては、継続的な検証が必要である。

今後に向けて

今回のようなケースは、単なる「炎上」で終わらせるのではなく、社会全体が多様性への理解を深める機会として活用することが望ましい。障害当事者の尊厳を守りながら、職場での実践的な課題解決について建設的に議論するためには、当事者団体と出版関係者、そして読者を含めた幅広い対話が必要である。

本書の内容については、読者一人ひとりが当事者の視点も含めた多角的な視点から読み解き、自分なりの見解を持つことが望ましい。職場での多様性を理解し、適切なコミュニケーション方法を模索するための一助となる内容である。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』(神田裕子著)三笠書房

[本書の評価]★★★★★(90点)

【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。 ★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点 ★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満 ★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満 ★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満 ★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満