職場での状況 業務自体は黙々とこなしており、誠実な印象はあるが、自発的にコミュニケーションを取ろうとはしない。社内イベントにもほとんど参加しないので、職場では浮いた存在になっている。特に困るのが、報告・連絡・相談がないため、Fさんの仕事の進捗状況を把握できないということだ。ある日、Fさんの担当顧客からの連絡で、Fさんのミスが発覚した。

Eさんの対応 とうとう堪忍袋の緒が切れたEさんは、「いったい君は何を考えているんだ?」「報告くらい、ちゃんとしなさい!」と、Fさんを叱りつけた。次の日から、Fさんは会社に来なくなった。

著者の解説 「いるいる、こういう人!」「あー、まさに今自分が悩んでいるのと同じような話だな」。そんな感想を持った方もいるかもしれない。そして、多くの人がどう対処したらよいのかと恐れ、途方に暮れているのではないかと思う。人は、未経験の物事に恐れを抱く。「こんな人、今までいなかった! どうやって接したらいいんだろう?」という戸惑いが、恐怖心につながるのだ。

本書では、このような流れで社内のよくある現象が紹介され、それに対して著者の解説が加えられている。一貫しているのは、知ることの重要性を示唆している点である。Fさんのような人は、どこの会社にもいるだろう。どのような人が上司になったとしても、対処方法がわからなければEさんのように叱りつけることがあるかもしれない。わかっていれば防ぐことができた事案でもある。

※ 引用部分は読みやすいようにアレンジを加えている。

様々な視点からの考察

本書をめぐる議論には複数の観点があり、それぞれ検討する価値がある。

日本自閉症協会の懸念 日本自閉症協会の意見表明は当事者団体として重要な問題提起である。障害特性を「困った人」という枠組みで論じることが、誤解や偏見を助長する可能性があるという指摘は真摯に受け止める必要がある。特に、障害特性を持つ人々が「困った人」というレッテルで一括りにされることへの懸念は理解できる。