コンクラーベ前の準備会議(枢機卿会議)が開催されたが、ブエノスアイレス大司教のホルへ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(現ローマ教皇フランシスコ)はそこで教会の現状を厳しく批判するショート。スピーチをしている。同枢機卿は「教会は病気だ」と述べ、教会の刷新の必要性をアピールしたのだ。同発言は多くの枢機卿の心を捉え、南米教会初の教皇誕生を生み出す原動力となった。

12年前、フランシスコ教皇が語った内容を紹介する。「福音を述べ伝えるためには、教会は(垣根から)飛び出さなければならない。自己中心的な教会はイエスを自身の目的のために利用し、イエスを外に出さない。これは病気だ。教会機関のさまざまな悪なる現象はそこに原因がある。この自己中心主義は教会の刷新のエネルギーを奪う。2つの教会像がある。一つは福音を述べ伝えるため、飛び出す教会だ。もう一つは社交界の教会だ。後者は自身の世界に閉じこもり、自身のために生きる教会で、魂の救済のために必要な教会の刷新や改革への希望の光を投げ捨ててしまう」。

ベルゴリア枢機卿の演説内容は現教会体制への厳しい批判だった。こんな批判をコンクラーベ前の準備会議で発言した枢機卿が90%以上の枢機卿たちの支持を得て教皇に選出されたのだ。

あれから今年3月で12年が経過した。フランシスコ教皇は前任者のベネディクト16世とは異なり、信者たちやメディアとの接触には積極的に応じてきた。謙遜を重んじ、その生活スタイルは質素だった。ただ、教会の刷新への情熱はあったが、バチカン内の保守派聖職者の抵抗もあって、多くは空振りに終わった。

それ以上に、カトリック教会の聖職者の未成年者への性的虐待問題が世界の教会で次々と発覚していったことで、フランシスコ教皇はその対応に忙殺せざるを得なくなっていった。フランシスコ教皇の過去12年間、聖職者の未成年者への性的虐待事件問題が影響を与え、教会から脱会する信者が増加する一方、聖職者不足が深刻となり、羊飼いのいない教区すら出てきた。聖職者から性的虐待を受けた犠牲者への賠償金の支払いで破産する教会も出てきた。教会一般のイメージは聖職者の性犯罪の多発と教会側の隠ぺい体質が明らかになって地に落ちてしまった。