起業家に必要な能力、と聞くと何を思い浮かべるでしょうか? 「誰にも思いつかない奇抜なアイデア」「ずば抜けたビジネス感覚」など、人並み外れたフレーズを思い浮かべる人は多いはず。

 しかし、楽天での球団創設や、決済サービス「PayPay」の立ち上げを牽引し、現在はファンド「ブーストキャピタル株式会社」の代表取締役である小澤隆生氏が語る「起業家に必要な要素」は、それらとはまったく逆をいくものです。

 起業を妄想で終わらせず現実に変える、小澤氏の徹底したリアル思考とは——。

小澤氏が語る「成功する起業家」3つの力

本気で挑むなら、まず草野球を勝ち抜け──凡人のための逆算起業論
(画像=『Business Journal』より 引用)

——小澤さんが考える、成功する起業家の特徴や必要な要素はなんでしょうか?

 私は大きく、

見抜く力
失敗力
徹底力

この3つの力が重要であると考えています。

 見抜く力は、起業のスタートにおいては、おもに市場選びに活かされます。どんなに優秀な人間でも、現状でビジネスの可能性やニーズがあまり大きくない市場を選んでしまうと成功しません。私は、ビジネスにおいて本当に大事なものを「センターピン」と呼んでいるのですが、そのセンターピンをどこに置くのか? を見極められる人が、本質を見抜く力がある人ですね。

 2つ目に挙げた失敗力は、上手に失敗させる力、失敗から学ぶ力ともいえるかもしれません。実は、先ほど話した事業におけるセンターピンは、見抜く力があったとしても外れてしまうことが多いものなのです。しかも、一度や二度ではききません。センターピンが外れる可能性がある事業に対しては本来、資金や労力は最小限で仕掛けていくべきなのですが、最初からかなり大金を投資して「大失敗」にしてしまう人も多くいます。失敗力とは、最小限の金額、最小限の労力を使って、成功に向けた修正をかけていくための失敗を重ねられる能力、ということですね。

——一見、金額や労力を最小限にしたスタートは当たり前のことのようにも思えますが、多くの人が「大失敗」に至る理由はどこにあるのでしょうか?

 多くの人にとって起業や新規事業は初めての試みであることが多いため、動き方がわからない上、これらに関するプロセスが確立されていないことも原因です。たとえば、すでにやり方が確立されている化学の実験であれば、最初は試験管からスタートして、徐々に規模を大きくしていきますよね。しかし、これがビジネスになると最初から生産工場の建設をしてしまう人が信じられない割合で存在するのです(笑)。

 一方で私は、上手に失敗を重ねて成功が見えている状態であれば、大きく勝負に出るという行動はしてもいい、と考えています。

 そして、3つ目の徹底力。私が最も重要だと考えている能力です。何があってもやり抜く力のことですね。この徹底力がなければ、成功するまでに何度も失敗を重ねて修正していくこともできません。見抜く力や失敗力が備わっていても、この徹底力がなければ成功はないともいえます。