しかし200万人以上の市民が、封鎖されて逃げ場のない場所で、軍事攻撃にさらされながら、食糧もなく飢餓状態に置かれているというのは、極めて異常な人道的惨禍のレベルである。
23年10月以来、ガザのための啓発活動にあたってきた方々は、全世界で疲弊しきっている。私自身も、5月19日のイスラエルの新たな軍事作戦以降に目にする画像や動画などで、あらためて精神的に参った状態に陥った。
日頃から紛争研究などをやっており、ロシア・ウクライナ戦争などでは実は2022年の段階から停戦の方向性などを論じていたが、ガザ危機については永久戦争になりそうだと書いていた私ですら、今は相当に厳しい。
日本には、欧米諸国と、非欧米諸国が、共同でガザ危機を憂慮するプラットフォームを構築してほしいなどとも書いていたが、今となってはそれも全て虚しい。
この状態までくると、もはや社会科学者は何の役にも立たず、宗教か哲学にすがるしかない。無力感が甚だしい。長生きなどするものではない。早くあの世に行きたい気持ちにかられている。人間は、徹底的な無力感の中でも、どうやって死ぬまでは生き続けていくのだろうか。それだけを問い直している。
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