ある人たちにとって、トイレは静かで落ち着くプライベートな空間かもしれません。

しかし、そんな安らぎの場所が、ある習慣によって知らぬ間に「苦しみの舞台」へと変貌するかもしれません。

アメリカ・ボストンのベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(BIDMC)の消化器専門医トリシャ・サティア・パスリチャ氏は、トイレ中のスマートフォン使用が痔(じ)のリスクを大幅に高める可能性を報告しました。

この研究結果は、2025年5月にカリフォルニア州サンディエゴで開催された会議「米国消化器病週間(Digestive Diseases Week: DDW)」にて発表されました。

目次

  • 「スマホ」と「トイレ」の関係
  • トイレでのスマホ使用は痔のリスクを46%増加させる

「スマホ」と「トイレ」の関係

痔は、肛門や直腸の血管が腫れて炎症を起こすことで発症する、きわめて一般的な疾患です。

日本においても、多くの成人が一度は経験すると言われており、その原因はさまざまです。

排便時の強いいきみ、長時間の座位、加齢、食生活の偏り、さらには妊娠や出産などがよく知られた要因ですが、現代の新たな生活習慣として浮上してきたのが「トイレ中のスマートフォン使用」です。

排便は、本来短時間で済ませるべき行為ですが、スマートフォンを持ち込むことで、ゲームや動画視聴に夢中になり、トイレに長くとどまってしまうケースが少なくありません。

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トイレでのスマホの習慣はどんな影響を及ぼす? / Credit:Canva

このような習慣が痔にどのような影響を与えるのかを明らかにするために、パスリチャ博士らは125人の大腸内視鏡検査を受けた患者を対象にアンケート調査を実施しました。

調査では、まずトイレでスマートフォンを使用する頻度について確認しました。

次に、1回のトイレ滞在時間がどの程度かを質問しました。

さらに、スマートフォンの使用がその滞在時間に影響を与えているかどうかについても尋ねました。