私は日本IBMのマーケティングコミュニティで、部門横断でマーケティング職の先輩と後輩間のコーチング制度を、有志の仲間で設計した経験があります。
そこで学んだのがまさに「コーチングは教えることではなく、聞くことだ」ということ。
実は当時の私は「先輩として、後輩に答えを教えればいい」と頭から思い込んでいたので最初はなかなか理解できませんでした。しかし仲間の一人から実際にコーチングのビデオ教材も見せてもらったりして自習しながら、徐々に理解を深めました。
そして後進のマーケティング職とのコーチングを実際に繰り返すことで、「コーチングでは、まずは相手の話を聞くことが大事」ということを、現場で学ぶことができました。
この学びは、後に私がソフトウェア事業本部で、事業部メンター制度を展開する際に活きました。
当時、私はソフトウェア事業本部の人材開発部長でした。人事部長と連携して、「コーチングを受けたい」という若手社員と「若手社員の悩み相談に乗りたい」というマネージャーをペアリングするコーチング制度の仕組みを作りました。このプログラムを発表すると、事業本部内で100名以上が手を挙げました。そして彼らをマッチングしたコーチング制度を開始しました。
この時、特に注意したのがマネジャーがコーチングの方法論を正しく理解することでした。そこで「事前にオンラインでコーチング研修を受けること」をマネジャーの参加条件にしました。
結果、このプログラムは成功し、IBM本社でもこの仕組みが採用されました。これもコーチングの基本を忠実に踏襲したおかげです。
「社内でコーチングを展開しているけど、うまくいかない」という人は、まずは1on1を実践するマネジャーに「コーチングの基本」を学んでいただくことから始めてはいかがでしょうか。
また「部下との1on1がうまくいかない」とお悩みの方は、次回の1on1では、まずは自分が話すのは2割以下に留めて、雑談から始めてみて、次第に部下がどんなことで悩んでいるかを聞いてみるところから始めてみてはいかがでしょうか。きっと、いつもとは違う1on1になると思います。