日本では「気候工学」という言葉自体が一般的ではなく、たとえばCCUS(炭素回収・利用・貯留)やDAC(直接空気回収)などのCDR技術は、「脱炭素社会の実現に向けた有望な技術」として、政府や産業界から強い支持を受けている。経済産業省や環境省の政策資料では、CDR技術がGX(グリーントランスフォーメーション)実現に欠かせない技術と位置づけられている。また、NEDOやJOGMEC、JSTなどが支援するプロジェクトにおいても、CDR技術の研究開発が進められている。
政府の政策資料や報道もこれらを気候工学とは位置づけておらず、教育現場やメディアでも、気候工学の全体像を紹介する機会は極めて限られている。その結果、市民の間では「空に撒くのは怪しいが、炭素を回収するのは良いこと」といった表層的な理解にとどまりやすい。
なぜ“良い技術”としてのみ認識されているのか?
一方で国際的な懸念や課題についての議論は、日本国内ではあまり活発ではない。CDR技術の導入に伴うリスクや副作用、倫理的問題についての議論が不足しており、技術推進のみに焦点が当てられている状況である。
なぜリスクについての議論が表に出ないのか?
今後の展望と必要な対応
CDR技術の導入にあたっては、技術的な可能性だけでなく、環境・社会的影響や倫理的な側面も含めた包括的な評価が求められる。また、国際的な議論やガバナンスの枠組みに積極的に参加し、技術の導入に伴うリスクや課題についての議論を深めることが重要である。
日本においても、CDR技術の推進とともに、そのリスクや課題についての議論を深めることで、持続可能な脱炭素社会の実現に向けたバランスの取れたアプローチが求められる。