① 太陽放射管理(SRM):成層圏に微粒子を撒き、太陽光を反射して地球に届く熱量を減らす技術。即効性がある反面、降水パターンの撹乱、オゾン層破壊など重大な副作用が懸念されている。
② 二酸化炭素除去(CDR):大気中のCO₂を物理・化学的に除去し、地中や海洋に固定する技術。BECCS(バイオエネルギー+CCS)、DAC(直接空気回収)、海洋施肥などが含まれる。
(※)BECCS:バイオマス発電後にCO₂を回収して貯留、DAC:空気から直接CO₂を吸収し、地下貯留や再利用、海洋施肥:鉄などを海に撒いて植物プランクトンを増やして、CO₂の吸収を促進
このうち、SRMは「空に何かを撒く」ために可視性が高く、直感的な違和感を伴うため、市民の批判も受けやすい。一方、CDRは「脱炭素」や「環境技術」の一環として推進される傾向があり、あまり警戒されていない。しかし、実際にはどちらも地球の気候システムを人為的に操作するという意味で、れっきとした気候工学である。
実際、IPCCや英国王立協会の報告書でも、SRMとCDRはともに「気候工学(Geoengineering)」として分類されている。国際的には、これらの技術をパリ協定の「1.5℃目標」を達成するための補完手段と位置づけ、制度整備やガバナンスの議論が進められている。
CDRについての国際的な懸念と課題
CDR技術の導入には以下のような懸念が指摘されている。
モラルハザードの懸念:CDR技術の存在が、排出削減の努力を遅らせる口実となる可能性があるとされている。企業や政府が、将来的なCDR技術の導入を前提に、現在の排出削減努力を怠るリスクが懸念されている。 技術的・経済的な課題:多くのCDR技術はまだ実証段階にあり、大規模な導入には高いコストやエネルギー消費が伴う。また、技術の成熟度や効果の持続性についても不確実性が存在する。 環境・社会的影響:BECCSなどの技術は、土地利用や生態系への影響、食料安全保障への懸念が伴う。また、大規模な土地転用や資源の集中が、地域社会や生態系に与える影響についても慎重な評価が求められている。