彼らはその現象を「カウンタースナッピング」と名付けました。
それは、引っ張る方向に力を加え続けると、ある一定のラインでパチンと「縮む」ような構造です。
これまで、この現象は理論上で示されるに留まり、実際に現実の構造として再現するのは難しいとされてきました。
理由は明確で、そんな構造を作るには、通常の材料の性質を超えて、力の流れそのものを設計する必要があるからです。
今回、研究チームは、この課題に対して非常にユニークなアプローチを取りました。
彼らは、構造を作る素材自体の特性を変えるのではなく、複数の非線形バネ(弾性要素)を組み合わせることで、全体としてカウンタースナッピング挙動を示す構造を設計したのです。
その構造は、3種類の異なるバネを計5つ使用したシンプルなものです。
重要なのは、これらのバネの力–変位の性質がすべて異なる点です。
そしてこれらを組み合わせることで、構造に一定の引張力が加わると、そのバランスが崩れて、構造が一気に「カクン」と折れたように形を変え、結果として長さが短くなるという動きが発生するのです。
それでは、こうした構造にゆっくりと重りを載せていった場合、実際にはどんな動きをするのでしょうか?
力が加わっていくと「急に短くなる」構造の応用例

研究チームはこのカウンタースナッピング構造に、水を入れたバケツを吊るして実験しました。
水が少しずつ注がれると、バケツの重さがじわじわと増していきます。
はじめは構造も穏やかに引き伸ばされ、何の変化も起こらないように見えます。
しかし、ある瞬間を境に突然、構造が「パチン!」と縮んで、吊り下げていたバケツが跳ね上がるように持ち上がるという挙動が観察されました。
外から加えた力(バケツの重さ)は少しずつ大きくなっているのに、構造の長さが突然短く変化するというのが、カウンタースナッピングの特徴です。