実際に研究の中では、「私は7人の医師に『異常なし』と言われ、自分がおかしいのかと思うようになった」と語る患者もいました。

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医療ガスライティングは、患者にトラウマを与え、医療から遠ざける。「人生が狂う」と言えるほど、長期的かつ重大な悪影響 / Credit:Canva

2つ目は、医療への不信とトラウマです。

「どうせまた否定される」と感じた患者は、医療そのものを恐れるようになります。

このような「医療的トラウマ」では、診療室でのフラッシュバックや動悸、拒否反応などの症状が見られることがあります。

3つ目は、医療の回避です。

患者はつらい思いを繰り返したくないあまり、病院に行くこと自体を避けるようになります。

その結果、本来であれば治せたはずの病気が進行し、重症化する危険性が高まります。

4つ目は、診断の遅れです。

症状が信じてもらえずに検査や専門医の紹介がなされないことで、重大な遅れが生じることがあります。

例えば、子宮内膜症は症状が出現してから、診断が下るまでに平均で6.7年かかる場合があります。(長いと10年くらいかかることも)

子宮内膜症は他の疾患と症状が似ており、誤診される場合が少なくありません。

こうした診断が難しいケースでは、医療ガスライティングが生じているゆえに、診断がいっそう遅れることもあります。

このように、今回の研究によって、医療ガスライティングが患者に永続する害を及ぼしていることが明らかになりました。

では、私たちはどうすればこの悪循環を断ち切ることができるのでしょうか。

医療ガスライティングをなくすには?

まず医師側の対応としては、患者の主観的な訴えも重要な医学情報として扱うことが求められます。

検査結果が正常であっても、「それでもつらい」という声を否定しない姿勢が必要です。

診断名がすぐに出せなくても、「一緒に考えましょう」という態度で臨むことが信頼関係を築く鍵になります。

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「気のせいでしょ」と言われても、セカンドオピニオンを恐れるべきではない! / Credit:Canva