医師に「気のせいでしょ」「大げさですよ」なんて、そっけなく扱われたり、訴えを無視されたりしたことがあるでしょうか。
もし、そんな経験があるなら、それは単なる“嫌な思い出”では済まされないかもしれません。
アメリカのラトガース大学(Rutgers University)の研究者チームのメタ研究によれば、医師による患者の症状の軽視、いわゆる「医療ガスライティング」が、患者の心と健康に長期的な悪影響を及ぼすことが明らかになりました。
この研究は、症状を否定された患者が受ける心理的・行動的・診療上の被害について、世界中の151の質的研究をもとに体系的に分析したものであり、2025年4月付の学術誌『Psychological Bulletin』に掲載されました。
目次
- 医師に苦しみを無視される!?「医療ガスライティング」とは何か?
- 医療ガスライティングが患者に及ぼす「4つの悪影」とは?
- 医療ガスライティングをなくすには?
医師に苦しみを無視される!?「医療ガスライティング」とは何か?
医療ガスライティングとは、患者が感じている症状や苦しみを、医師が「気のせい」「問題ない」と否定することで、患者に「自分の感覚は間違っているのかもしれない」と感じさせてしまう心理的作用を指します。
この用語はもともと、相手の現実感や記憶を否定し、精神的に操作する心理的虐待行為「ガスライティング」から派生したもので、医療の現場における同様の現象を示す言葉として注目されています。
近年では、医師たちから「symptom invalidation」とも呼ばれるようになっていますが、患者からすると「医療ガスライティング(medical gaslighting)」と呼ぶ方が多いかもしれません。

そして特に女性やマイノリティ、慢性的な痛みや疲労を抱える人々がこの体験をしやすく、そこには社会的構造や無意識のバイアスが関係しているとされています。