科学的・歴史的視点からの反証と主な批判

マッドフラッド陰謀論とタルタリア帝国の主張に対しては、科学的・歴史的な観点から多くの反証や批判がなされています。
建物の地下部分は構造上の理由:建築物の1階部分が地面より低い位置にあるのは、基礎の安定性確保、地下室の利用、あるいは土地の傾斜や後の地面の嵩上げ(かさあげ)など、建築技術上・都市計画上の理由で説明できると指摘されています。
例えば、アメリカのシアトルでは20世紀初頭に大規模な再開発計画(Regrade project)によって道路が元の地盤より高くされたため、古い建物の1階が地下のようになった事例が実際にあります。
「タルタリア帝国」の歴史的誤解:歴史学的に見ると、「タルタリア」は特定の統一帝国を指すのではなく、モンゴル帝国以降の中央ユーラシアの遊牧民(タタール人など)が住む広大な地域を指す、当時のヨーロッパ人から見た地理的名称でした。明確な国境や統一された文明を持つ「帝国」として実在したという証拠はありません。
証拠とされるものの解釈:古い写真や地図が「改ざんされた」という主張は、歴史的文脈を無視した解釈や、単なる経年劣化や当時の印刷技術の限界を誤解している場合が多いとされます。中国の万里の長城の一部が砂に埋もれているのは、泥の洪水ではなく、長年の自然な砂の堆積(風などによる)によるものです。
巨人の主張について:「巨人の骨」とされる写真の多くは合成であったり、あるいはロバート・ワドロー(272cm)のような、医学的に記録されている身長の高い人物の写真を文脈を無視して引用しているケースが見られます。19世紀以前の「巨人文明」を示す信頼できる考古学的証拠はありません。
泥の洪水の記録の不在:地球規模で文明をリセットするほどの「泥の洪水」が19世紀に発生したのであれば、地質学的記録はもちろん、多数の文献記録、新聞報道、個人の日記などが残っているはずですが、そのような信頼できる証拠は見つかっていません。
なぜタルタリア帝国だけがその影響を強く受け、他の文明は影響を受けなかったのか、あるいはその記憶を保持しているのか、といった点も論理的な説明が難しいとされます。
RationalWikiやSkeptoidといったファクトチェックサイトや懐疑主義的なメディアでは、これらの反証が詳細に解説されています。