その結果、この熱電池は昼夜のゆるやかな温度揺らぎに合わせて安定して起電し、繰り返し発電が可能であることが実証されました。
下の写真は実際に試作された装置で、手のひらサイズのセルの両端に温度制御ブロックを当てて発電を検証している様子です。
分子カゴが拓くマイクロ発電革命

わずかな温度差から電気を生む新原理の登場に、研究者たちは大きな期待を寄せています。
この成果は、これまで捨てられていた低品位な熱エネルギーを電力に変換する技術のブレイクスルーになる可能性があります。
特に電池交換が難しい IoT センサーの自立電源や、体温と外気温の差で動くウェアラブル端末、工場やデータセンターの排熱を再利用するマイクロ発電など、応用シーンは数えきれません。
「身の回りのありふれた温度差を電気に変える技術の革新につながる」と本研究の発表は強調しています。
研究チームも、「セミクラスレートという新素材が発電のスイッチになり得る」とその意義を語ります。
実際、本手法は熱と化学反応の融合による新しいエネルギー変換アプローチであり、従来の発電にはない独自の強みを持っています。
さらに興味深いのは、この成果がセミクラスレートハイドレート化学の新たな可能性を示したことです。
これまでクラスレートハイドレートは主にガスの貯蔵や輸送などに注目されてきましたが、熱電変換への応用という**「新しい遊び場」が開けたと言えるでしょう。
研究者の一人は「セミクラスレート化学は熱電デバイスとの融合によって新たな研究フロンティア(遊び場)が生まれた」と表現しています。
分子のカゴを自在に作り出し、それをスイッチのように扱う――このユニークな化学現象を応用すれば、他にも思いもよらない発電メカニズムが発見されるかもしれません。
今回の熱電池は、まだ研究室レベルの試作段階ですが、そのインパクトは大きく報じられています。