対象となった職種は263種類に及びます。

今回の研究では、あらかじめ分析計画を公開したうえで、年齢・性別・学歴などの人口統計学的要因に加えてビッグファイブ性格特性も詳細に測定し、統計モデルに組み込みました。

つまり「本人の性格や背景を考慮しても、職業の違いによって満足度に差が出るのか」を検証したのです。

この点が、過去の研究で曖昧だった部分を大きく補う特徴となっています。

研究チームの目的は、職業ごとの「仕事満足度」および「人生満足度」の差を客観的に測定し、「どの職業に就く人がより幸せなのか」を明らかにすることでした。

さらに、もし職業間で満足度に差が見られた場合、その要因が収入や社会的地位によるのか、あるいは仕事内容そのもの(自律性や対人支援の度合いなど)によるのかを検証する狙いもありました。

いわば「仕事選びと幸福度」の関係をデータで解き明かそうとする、壮大な試みです。

5.9万人が答えた「仕事満足度」の真実

5.9万人が答えた「仕事満足度」の真実
5.9万人が答えた「仕事満足度」の真実 / 仕事の満足度が高い職業/Credit:Maris Vainre et al . PsyArXiv (2025)

この研究ではエストニア・バイオバンク参加者から収集されたアンケートデータを分析しました。

参加者は自分の職業、年収、性格テストの結果、現在の仕事満足度、そして全体的な人生満足度を詳しく報告しています。

すると職業によって平均的な仕事満足度と人生満足度に有意な差があることが確認されました。

統計的なばらつきを示す効果量で見ると、職業によって仕事満足度は全変動の約7%(調整前)~6%(調整後)が説明され、人生満足度も約5%(調整前)~1~2%(調整後)が説明されるという結果です。

これらの値は心理学や社会学の分野ではかなり大きな差とされ、「職業による満足度の違い」が確かに存在することを示唆しています。

さらに、年齢・性別・学歴・性格などをすべて統計的にコントロールしてもなお職業間の満足度の差が残りました。