ゾウの精巣が体内に保持されていると、精子たちもこのような高温にさらされることになり、ほとんどの精子は死んでしまうはずでした。
しかし現実のゾウは精子が熱されても、安定して子孫を残し続けています。
研究では、このとき重要となるのが、突然変異を防ぐTP53遺伝子とp53タンパク質の働きだと述べられています。
TP53による突然変異を防ぐ能力が熱による精子遺伝子の突然変異を食い止めるのに十分ならば、睾丸が熱い体内にあっても問題ありません。
他の動物のようにTP53が1個しかない場合、精子を熱から守ることはできません。
ですが研究者たちは、現実のゾウのように20個あれば、可能になると考えました。
つまり、ゾウに多数の抗がん遺伝子「TP53」があるのは、精子を熱から守るための進化の結果であり、がん化を防ぐ能力は「嬉しい副作用」だったと言えるでしょう。
研究者たちは、精子の熱耐性を得るための進化がゾウの抗がん能力獲得につながったとする考えは、抗がん遺伝子がどのようにして出現したかを理解する上で、重要な洞察を与えてくれると述べています。
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参考文献
Hot testicles may hold the secret to elephants’ anti-cancer genes, suggests new study
https://phys.org/news/2023-06-hot-testicles-secret-elephants-anti-cancer.html
元論文
Uncoupling elephant TP53 and cancer
https://www.cell.com/trends/ecology-evolution/fulltext/S0169-5347(23)00135-0?_returnURL=https%3A%2F%2Flinkinghub.elsevier.com%2Fretrieve%2Fpii%2FS0169534723001350%3Fshowall%3Dtrue#%20