実は同じドーナツ型の岩石は2023年4月15日にも一度、パーサヴィアランスによって撮影されていました。
ただそのときは約400メートルというかなり離れた距離からの撮影だったので、はっきりとドーナツ型になっているかどうかが判然としていませんでした。
こちらがその画像です。

今回の撮影はそのときよりグッと接近しているのでドーナツ型がはっきりと見えますが、その正確な構造やサイズなどはもっと近づかないと詳しく特定できないといいます。
しかし何があると岩石の中央だけがくり抜かれる状態になるのでしょうか?
ドーナツ化したのは「火星の風」による浸食?
研究者たちは岩石がドーナツ型になった理由について、「地球上の岩石と同じように長期間にわたって浸食された結果である」と推測しています。
ただし火星では水を媒介とした浸食があり得ないため、これは風や塵によって引き起こされた風化だと考えられます。
火星では1年(約687日)の間に局地的な嵐が発生しますが、数年に一度の間隔で全球に及ぶ大規模な砂嵐に見舞われます。
しかもその砂嵐は数カ月にわたって続くという。
こうした風は砂粒や小さな岩石を舞い上げて、岩石の表面にぶつけることで、岩石を侵食していきます。
ただこうした風食の作用は岩石表面に均一に起きるわけではありません。
もともと岩石中央にくぼみなどがあった場合、そこに風食の影響が集中して中央部分だけをくり抜くよに侵食していく場合があります。
このドーナツ型の岩石はおそらく、そうした砂嵐が発生した際の度重なる浸食によって偶然にもこのような奇妙な形になったと思われます。
また周囲に散らばる小さな破片は、元々この岩石の一部だったものが風食の影響で割れて掻き出されたものかもしれません。
こうした影響は数千年の長い年月をかけて少しずつ進んだものだと考えられます。
