そのため「クズ」「ダメな大人だね」などと言われて逆に喜ぶ人たちがいます。
こうした考えに従うと、自己肯定感の低い人は「自分は必要とされている」などのポジティブな言葉を自身に言い聞かせると、自分の欠点を意識してしまい逆に気分が悪くなるのではないかと考えたのです。
研究チームはまず、カナダの大学生約250人に対し、「自分を励ます言葉をどのくらい使うか」を調査しました。すると約半数が「頻繁に使っている」と答え、試験やプレゼン前など緊張する場面でよく活用していることがわかりました。
そこでチームは、68人の学生を自己肯定感が高い群(high self-esteem group)と自己肯定感が低い群(low self-esteem group)に分け、こうした言葉の効果について2つの実験で検証を行いました。
まずは「私はみんなから愛されている(I am a lovable person)」というフレーズを何度も繰り返してもらい、このときの気分や自己評価を測定する質問票に答えてもらいました。
次に、「フレーズが本当に自分に当てはまるかどうか」を考えてもらう条件と、「フレーズが当てはまらない場合もある」と柔軟に考えてもらう条件で、参加者の自己評価の変化を比較しました。
すると自己肯定感の低いグループは、みなポジティブな言葉で気分が悪化したのです。
自己肯定感の低い人に「前向きな言葉」が逆効果になるワケ
実験の結果では、自己肯定感の高い人では「私は愛されている」というフレーズを唱えることでわずかに気分が改善しました。
しかし、自己肯定感の低い人では逆に気分が悪化していました。
研究者たちはその理由として、「自己肯定感の低い人はこの言葉を自分の現実と比較してしまい、『自分はそんなに愛されていない』と感じてしまうからだ」と分析しています。
さらに、否定的な考えが頭に浮かぶことで、「自分はポジティブなことすら信じられないダメな人間なのでは」という悪循環に陥ることが示唆されました。