このチューブには、あらかじめ折れ曲がった部分「屈曲部」があり、そこに空気を送り込むと、その部分が移動します。
そして「屈曲部」の位置が変わると、空気の流れも変化し、それによって再び別の場所に「屈曲部」が現れるという振動が起こります。
チューブが一本だけだと、この振動はランダムです。
しかし、チューブを複数本組み合わせて「足」にすると、地面との摩擦や空気の流れによる物理的な影響だけで、それぞれの動作が自然と同期し始めます。
その結果、制御信号を一切使わずにロボットが歩き始めるのです。
コンピューターもセンサーも必要なく、空気と柔らかい素材と物理法則だけで動くのです。
こうして、「脳を持たない、足で考えるロボット」が誕生しました。
とくに注目すべきは、その柔軟性とスピードです。

このロボットは、最大で1秒間に体長の30倍の距離を進むことができます。
動画で確認すると分かる通り、ソフトロボットとしては、恐ろしいほどの移動速度です。
フェラーリが1秒間に車体の20倍の距離を移動することを考えても、やはり常識外れの性能だと言えます。
そして続く部分では、このロボットが「足で考える」と言える理由をさらに考えていきます。
「足で考えるロボット」が開発される!脳が無くても環境に合わせて足の動きを変える

「足で考える」とは、どういうことなのでしょうか?
これまでのロボットは、センサーで情報を集めてコンピューターが処理し、モーターに命令を出して動作を制御していました。
いわば、ロボットには頭脳が存在し、それが身体を完全に支配しているような構造です。
しかし今回のロボットには、そうした中央の司令塔が存在しません。
それぞれの足が自己振動という独立した運動機構を持ち、環境と直接的に相互作用しながら、全体としてまとまった動きを見せるのです。