④浸潤:胚がオルガノイド内部の間質細胞層へと深く入り込みます。
さらに興味深いことに胚の側だけでなく、オルガノイドの間質細胞も“脱落膜化”と呼ばれる妊娠時の変化もみられました。
脱落膜化(だつらくまくか)は、排卵後に増えたプロゲステロンなどの合図を受けて、子宮内膜の間質細胞がふくらみ、栄養や免疫因子をたっぷり蓄えた“ふかふかのベッド”に変身する現象です。
この変化によって受精卵が着床しやすくなり、その後の胎盤形成や胎児の成長を支える土台が整います。
以上の結果は早期着床の重要な要素を試験管の中で再現したと言える成果で、今後は着床現象にとどまらず、胎盤が形成される一連の過程をさらに詳しく研究したり、人工子宮の技術へ発展させたりする可能性も示唆されています。
試験管から始まる妊娠革命

今回の成果が特に注目されるのは、子宮内膜オルガノイドを“胚が外から自然に入りこめる形”に作り上げたことで、これまで観察が難しかった着床の一連の流れを、より本物に近い状態で追体験できる点にあります。
これにより、研究者は妊娠初期の複雑な細胞同士のやり取りを詳細に追跡し、どのタイミングでどの分子が働くかなどを探れるようになりました。
たとえばホルモン刺激によって着床しやすい内膜環境を整えた場合、胚はスムーズにオルガノイドに侵入し、間質細胞が“脱落膜化”と呼ばれる妊娠時の変化を見せることも確認されています。
これは本来、胚が母体内で“根を張る”ために欠かせない現象とされており、体外でこうした反応を精密に調べられるのは大きな進歩です。
また興味深いことに、胚のほうも絨毛細胞(胎盤の基盤となる細胞)へ分化し始める様子が観察されました。