SAF(Sustainable Aviation Fuel)は、再生可能資源由来の航空燃料で、主に廃食油や非可食植物油、藻類、さらにはe-fuelベースの合成燃料まで多様な原料から製造される。国際航空においてCO₂排出量を削減する唯一の現実的な手段として、注目されている。

日本では、コスモエネルギーグループが堺製油所でSAFの量産プラントを建設中であり、2025年にはANAやJALへの供給を開始予定である。また、出光興産はオーストラリアでポンガミアという油糧作物の商用栽培に乗り出すなど、原料の安定供給体制構築にも動き出している。

政府は2030年までに国内航空燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げ、約170万kLの需要に対し、200万kL近い供給体制を整えようとしている。ただし、製造コストは依然として高く、ジェット燃料(100〜120円/L)に対し、SAFは300〜500円/L程度となっており、航空運賃への転嫁が懸念されている。

たとえば、東京~沖縄間を往復する航空機が50%SAFを使用した場合、1人あたりの燃料コストは通常の約2倍、最大で運賃が1万円程度上昇する可能性もあると試算されている。ただし2035年頃には技術革新により、価格差は1〜2割程度に縮小、2050年には従来燃料と同等になる見通しも出ている。

出典:NEDO、経産省SAFロードマップ、IATA報告等

未来は両輪で進む

e-fuelとSAFは、それぞれ自動車と航空というセクターにおける脱炭素の鍵を握る存在である。2035年はその本格的な転換点となり、2050年にはグリーン燃料が主流になる可能性も高い。ただし、これらはコストの問題を克服できた場合に限られる。価格競争力の確保、原料確保、インフラ整備、そして国際的な政策協調が今後の成否を握る。

これらの技術が未来のエネルギーインフラとして根づくには、政治の安定と技術革新、そして市民の理解と協力が不可欠である。