銀行は土地を担保にして無制限にお金を貸し、企業も個人もそれを資産運用に回していました。つまり、「資産価格が上がることが前提」に経済が回っていたのです。これはまさに、アメリカの住宅バブルと同じ構造でした。違ったのは、アメリカでは住宅だったものが日本では“株”と“土地”だったという点です。
しかし1990年代初頭、日本銀行が金利を引き上げ、金融の引き締めに踏み切ったことで、バブルに浮かれていた空気は一変します。
当時、企業や個人の多くは、「土地や株は持っているだけで値上がりする」という考えのもと、大量の借金をしてでも資産を買い漁っていました。とにかく借金してでも早く買わなければ値上がりに乗り遅れて損をする、というムードが社会全体に広がっていたのです。
土地や株の高騰は、そうした借金の“担保”として機能していました。つまり借りる側は、「返せなくても土地を売れば借金を返済したうえでお釣りが来る」。銀行も担保となる土地が高額なので、「返済能力は気にせずに貸付できる」。その前提でどんどんお金が動いていたのです。
ところが日銀の金利引き上げによって、融資の条件が厳しくなり、「お金が借りにくくなる」「利子が高くなる」という状況が生まれました。
そうするとどうなるでしょう? 当然資産を買おうとする人が減っていきます。つまり土地や株の需要が下がるのです。すると、今まで右肩上がりだった土地や株の価格も徐々に頭打ちになり、やがて下がり始めます。
1億円だった土地が8000万円に下がると、銀行は「担保の価値が下がったので、貸したお金を一部返してくれ」と企業や個人に迫ります。これが「追い証」や「担保不足」という状況です。
すると企業や個人は資金繰りに追われ、現金化するために他の資産を売りに出します。買う人より売る人の方が多くなればどんどん値段は下がります。こうして売りが売りを呼ぶ悪循環に入り、市場は雪崩のように崩れていきました。